八月。
キュピル
「夏休みフィイイイイイバアアアアアア!!・・・・のはずがぁ・・・・。」
ファン
「やっと化学反応も覚えた所で今度は化学反応式について学んでみましょう。これもこの先必須となる分野ですので
しっかり覚えて行きましょう。」
キュピル
「おーい・・・。今は夏休みだぞー・・。部活も休もうぜ・・・。」
ファン
「何言っているのですか、キュピルさん。夏休みでも部活はありますよ。」
ドタドタ
輝月
「その通りじゃ、キュピル!!剣道やるぞ!」
キュピル
「もう嫌だ、これ。」
ファン
「おや、もうこんな時間でしたか。ではキュピルさん。次回で化学反応式を共に学びましょう。」
キュピル
「もう実験でも何でもねぇ、これただの科学の勉強だ・・・。科学勉強部に改名しろ。」
輝月
「よし、道場へ参るぞ、キュピル!」
キュピル
「ァァァアアアアァァァ〜〜〜〜!」
輝月に腕を引っ張られながら道場へと連れ去られていく。
あぁ、今更だけどルイは一体何部なんだろうか・・・。きっと一つだけ部活やって楽しくやっているんだろうなぁ(涙
輝月
「今戻ったぞ!」
琶月
「お帰りなさい、師匠!」
キュピル
「ここ道場だろ、お前の家違う。」
琶月
「あー!不届き者ー!帰れ帰れ!」
キュピル
「お前はこの四カ月何を見てきた?」
琶月
「ぶーぶー!私は妬いているんですよ!私の憧れの師匠を虜にし付きっきりで教えて貰っているんですよ!」
キュピル
「付きっきりっつーか・・・。」
輝月
「琶月よ、キュピルの腕は確かなのだ。」
自分で言うのもなんだが輝月とヘル、二人の指導を受けた俺は自分の意思に反して剣術の腕をメキメキと上げてきた。
お陰さまで二つの剣道部の一般部員と戦っても今はそうそう負けない。元から俺は剣術の素質があったのだろう。
輝月
「さて、キュピルよ。これまでお主に様々な技を教えたが此処から先は更に厳しく稽古つける。」
キュピル
「え?突然だな。一体何があるんだ?」
輝月
「うむ、実は10月に剣道の県大会があるのじゃ。その大会で見事優勝出来れば東日本での剣道大会に参加できるぞ。」
県大会・・・。別にそこまで俺は考えていなかったが・・・。
キュピル
「・・・県大会か・・・。」
輝月
「はよ面を被らぬか。今日は我が一族に伝わる剣術を伝授するぞ。」
キュピル
「お前の一家は何者だ。」
琶月
「説明しようー!師匠は平安時代から続く侍の末裔なのだ!家には代々伝わる真剣もあるんです!!」
キュピル
「そういうのペラペラ喋っていいのか?」
輝月
「突き!!」
キュピル
「ぐぇっ!って、何でだよ!!琶月にやれよ!」
・・・・。
・・・・・・・・・・・。
ヘル
「キュピル。お前には剣道で一番重要な要素、パワーをつけさせるために様々なトレーニングを始動した。」
ヘルが大きな声でキュピルに言う。周囲では様々な者達がダンベルなどを持ちあげて筋トレをしている。しかも五月蠅い。
キュピル
「お陰さまでこっちの道場で竹刀握った回数はこの四ヶ月間1回でした。
これただの筋トレ部だ。」
ヘル
「これまで色んな指導をしたがこれから先もっと厳しく指導するぞ。」
キュピル
「あぁ、知っている。10月に剣道の県大会があるんだよな?」
ヘル
「違う。10月にパワーリフティングの県大会が。」
キュピル
「正真正銘筋トレ部じゃねーかよ!」
ヘル
「冗談だ。修行は真面目に受け続けるだけじゃなく笑って心にゆとりを持たせるのも重要だ。」
キュピル
「四カ月かけてずっと筋トレさせたのは笑いのためにか?四か月の末滑ったぞ?」
ヘル
「いいか、剣道のルールには竹刀を両手から離したらその時点で失格となる。知っていたか?」
キュピル
「む・・・それは知らなかった・・。剣道はてっきり面や籠手、胴とかを綺麗に叩けば勝ちってのは知ってたが・・・。」
ヘル
「剣道の技の中に巻き上げと呼ばれる技がある。これは相手の竹刀を巻き上げて弾き飛ばす事からそう呼ばれている。」
キュピル
「へぇ・・。ちょっとルールブック見てみるか。」
ヘルの道場の隅にルールブックが置いてあるので手に取り実際に読んでみる。
そのルールブックすら何故かダンベルの下敷きになっている有様。こいつ等剣道する気本当にあるのか?
キュピル
「えーっと・・・どれどれ・・。お、あった。・・・・ふむふむ・・・・。
・・・巻き上げ自体は決めても一本にはならないのか。」
ヘル
「そうだ。両手から竹刀を離すと反則になる。これを二回やってしまうと一本になる訳だ。
つまり二回巻き上げ決まれば実質一本取った事にもなる。」
キュピルが自分の顎を摩りながら熟考する。
キュピル
「ふーむ・・・。これは巻き上げ覚えてみる価値ありそうだな・・・。」
ヘル
「別に竹刀を落すためだけなら巻き上げに拘らなくても良い。相手に竹刀を持ち直した時の隙を見つけたら
即座に叩いて叩き落とすのも良い。油断した相手が悪いからな。巻き上げにしろ叩きとおすにしても
これ等は力がないと出来ない芸当技だがな。」
キュピル
「なるほど、ずっと四カ月間力をつけたのはこのためか!
・・・ん、でもこの本によると巻き上げは力あんまり関係ないみたいだぞ・・・。」
ヘル
「叩き落としは力がいる。」
キュピル
「・・・・へぇ。」
少し疑心暗鬼になったキュピル。疑いの眼差しをヘルに向ける。
ヘル
「言っておくが竹刀を落とさせる意外にも腕力をつける事には重要な意味がある。
キュピル、初めて竹刀を持った時と今持った時と比べて竹刀が軽くなったように思えるだろ?」
キュピル
「あぁ、確かに軽く感じる。これは腕力がついたからか。」
ヘル
「そうだ。同じ物でも竹刀が軽く感じるようになれば一瞬の隙を素早く突く事が出来る。これはどんなに技を磨いても
出来ない。分ったか?」
キュピル
「・・・なるほど!確かにいくら輝月の元で技を磨いてもそれを実行する筋力と体力がなければ意味がないもんな。」
ヘル
「そうだ!お前も分ってきたな!」
キュピル
「そのためにずっと四ヶ月間力をつけさせられたのか・・・深いなぁ。」
ヘル
「いや、力をつけさせたのは10月にあるパワーリフティングの県大会のためだ。」
キュピル
「リフティング部に早く改名しろ!!」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
9月。
とうとう夏休みも終わり授業も再開した。
久々に顔を合わせた者達が「久しぶり〜!」と同じ言葉を何度も良い続け共にはしゃぎ回っている。
気温は残暑が続いており今でも30℃近い猛暑日が続いている。
マキシミン
「あぁっ〜、くそあぢぃ〜・・・。プールの授業またやってくんねーかな・・・。」
キュピル
「あれ、マキシミン。お前退学したんじゃなかったのか?」
マキシミン
「何処からそんな話しが出て来たおらぁっ!!」
キュピル
「いや、お前期末試験最初ALL0点だったじゃねーか。ぷーくすくす。」
煽られたマキシミンはキュピルと取っ組み合いを始めた。
ルイ
「ちょっと・・・。あんた達いきなり何やってるのよ・・。」
テルミット
「皆さん、おはようございます。夏休みはいかがでしたか?先生は実家へ帰省し良い休日を過ごしました。
長い休日が終わり気持ちが緩んでしまわれていると思いますが今日一日、再び学園生活が始まるという事を再認識し
気を引き締め、二学期を過ごしてください。また二学期は体育祭、文化祭、そして一部の部活では県大会もあるため
各自しっかりとスケジュール管理をし無理のない生活を送ってくださいね。」
テルミット先生が教卓の前で何か話していたのにも関わらず取っ組み合いを続けてきたキュピルとマキシミン。
ホームルームが終わった時、二人の顔面に矢がそれぞれ50本ずつ張り付いていた。
マキシミン
「前みえねぇっ。」
キュピル
「俺もだっ。」
マキシミン
「これは成績落ちても当然だな。」
キュピル
「だなっ。」
マキシミン
「今期の期末試験はこれで免除だな。」
キュピル
「だなっ。」
数秒後、二人の頭に大量の矢が張り付き抜く時髪の毛も一緒に引っ張られ地獄を味わった。
キュピル
「これ吸盤だろ?どうやって髪の毛に張り付いているんだよ。」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
キュピル
「いくぞ。」
マキシミン
「おう。」
九月なのに真夏の如くギラギラと照りつける日差しを頭から受け続け、ダラダラと汗を流しながら二人が同時に頷く。
そして両手を大きくあげる。二人の両手には大きく靡く茶色の旗。
キュピル
「せーの・・。」
キュピル&マキシミン
「ふれええええええ!!ふれえええええええ!!フレッシュブラウン組ーーーーーーー!!」
キュピル
「何が爽やか茶色だ!!この色決めた奴出てきやがれぇっ!!!」
マキシミン
「てめぇ等舐めてんのかおおぉあああああぁぁっっっ!!」
体育祭実行委員
「きゃぁぁっっ!!」
体育祭当日を迎えた彼等。
午前の部を追え、昼食時間も過ぎ、午後の競技が始まる前に各組みの応援団がそれぞれの激励を飛ばし合う。
・・・が、フレッシュブラウン組みだけは自分の色に納得できず罵倒罵声を叫び続けた末大会本部に突撃し文句を言いまくる悲劇の応援となった。
その後二人の頭に数え切れないほどの矢がくっ付いた状態で茶組のスペースに戻ってきた。
キュピル
「どうもー、アメリカ原住民でーす。この矢がもはや飾りになっちまって。」
ルイ
「ちょっと、あんた等〜・・!!真面目にやりなさい!!」
赤色の鉢巻きをつけたルイがキュピルとマキシミンの元へ駆け寄る。
キュピル
「この色作った奴真面目じゃないだろ!」
体育祭は三つのチームに分かれておりそれぞれ赤組・青組・フレッシュブラウン組となっている。
キュピル
「一つ浮いているってレベルじゃねーぞこれ・・・。」
マキシミン
「しかもどう言う訳かフレッシュブラウン組みは過去一度でも悪成績を取った物だけで構成されている・・。
これは新手の苛めか?」
キュピル
「くっそぉぉぉ!」
マキシミン
「こっんのぉぉっっ!!」
キュピルとマキシミンが手に持っている茶色の旗をビリビリに破り裂き投げ捨てる。
ヘル
「おいおい、それは俺が二週間かけてつくった旗なんだが・・・。」
キュピル
「ヘル先輩!!ただ茶色の布を棒きれに巻きつけるだけで何で二週間もかかるんですか!!!!!」
何度も叫び続けたせいかぜぇぜぇと息を切らすキュピル。
キュピル
「くっそ・・・。輝月先輩は何故か青組・・・。茶組は本当に過去一度でも赤点取った事のある奴だけで構成されてんのか・・・?」
ルイ
「う、うーん。ほら。そんなに気を荒立てないで。フレッシュ・ブラウン組だって勝つ望みはまだ残ってるんでしょ?」
ルイが得点板を指差す。そこには 【赤:189】 【青:179】 【フレッシュブラ:10】 と書かれていた。
キュピル
「明らかにこれブラウンって文字が入りきらなかっただろ!!!
しかも本当は107点なのに文字がギリギリのせいで7が地面に落ちてるぞおらああああ!!」
再び叫び疲れたのかぜぇぜぇと息を切らす。
キュピル
「くっそぉぉぉぉ!俺の高校生活はもっと華に満ち溢れた物じゃなかったのかぁぁっ!」
ルイ
「一体どんな高校生活を夢見てるのよ・・。」
マキシミンが地べたに座り、苦行の顔を浮かべながら話す。
マキシミン
「くそっ、茶組は赤点取った奴らで構成されている。そもそも赤点取った奴等の殆どは不真面目なのが原因だ。
あいつ等体育祭でも真面目にやってねぇぞ。」
テルミット
「よーい、どん!」
午後の競技が始まり徒競走が行われている。赤、青は全力疾走で走っているのだが茶は明らかにやる気がなく
だらだらとゆっくり走りビリでゴールしている。
即座にキュピルとマキシミンがゴールへ駆けつけビリでゴールした茶組の者を蹴飛ばし始めた。
キュピル
「てめっ!このっ!」
マキシミン
「死ねっ!カスっ!!」
琶月キュピル
「わああぁああぁっ!!ごめんなさーーーい!!今の冗談抜きで全力疾走なんですーーー!!」
「なんだよ、誰かと思えば輝月先輩の傍にいつもべったりくっついてる奴じゃないか。」
マキシミン
「あぁ、キュピルの部活の知り合いか。お前も茶組か。」
キュピル
「ぷーくすくすwww」
琶月
「わああああああ!!!もうだめだあああああああああ!!!!」
プライドが傷ついたのか。それとも同格扱いされた事にショックを受けたのか。地面の上に突っ伏すわんわん泣き始めた。
マキシミン
「おい・・。女子泣かす事ないだろ。」
キュピル
「いや、お前が酷い言葉ばっかり使うから泣いたんだろ!?」
マキシミン
「てめえの蹴りが痛かったから泣いたんだろ!」
キュピル
「おめえも散々蹴っただろうが!!」
泣く琶月を余所に今度はキュピルとマキシミンが乱闘騒ぎを再び起こし何人かが集まって二人を引き離す。
赤組
「おい、お前等競技場から離れろ。」
青組
「無能の集まりの茶組だからってここでマヌケな喧嘩しなくたっていいだろ。」
キュピル
「くっそぉ!見てろぉ!ぜってぇ茶組優勝してやるぞぉぉぉおおお!!」
マキシミン
「そうだ、ぜってぇに優勝してやらあああぁぁっっ!!」
・・・・。
・・・・・・・・・・・。
キュピル
「っと言う訳で作戦会議だ。」
校舎裏で茶組の者を何人か集め作戦会議を開く。
キュピル
「ここから茶組がどうすれば優勝できるか皆で考えるぞ。」
ヘル
「おぅ。」
琶月
「はーい!」
ルイ
「ちょっと・・何で赤組の私まで参加しなきゃいけないの!?」
キュピル
「ルイは頭良いから重要な参謀役だ。」
ルイ
「参謀って言葉ちゃんと調べてから言ったほうがいいよ・・・。」
キュピル
「まぁまぁ・・。・・・現状茶組は赤、青と点数差が絶望的な差になりつつある。ここから巻き上げるにはどうするべきだ?」
マキシミン
「簡単だろ。こっから先全部一位になればいい。」
キュピル
「やっぱりそうだよな!」
ルイ
「・・・はぁ、あのね・・。実はもうそれだけじゃ勝てないのよ?」
キュピル
「何だって!?」
ルイが溜息をつきながら鉛筆を取り出し体育祭の競技種目の案内ページで計算し始めた。
ルイ
「徒競走が終わった今点数になる勝負は後三種目しかない。」
キュピル
「残った競技は綱引き、玉入れ、バトンリレー・・・団体種目だけが残ったな。」
琶月
「あ、全部私苦手です。皆さん頑張ってください。」
キュピルとマキシミンが琶月を踏みつけまくっているがルイは気にせず話しを続ける。
ルイ
「三種目とも一位は40点。二位は15点。三位は0点。ここからは点配分の差が大きいわね。
現在のそれぞれの組の点数は赤組は220点。青組は201点。そしてフレッシュブラウンは11点・・?」
キュピル
「112点な。」
ルイ
「112点ね。仮にここから先フレッシュブラウンが全部一位を取ったとするよ。+120点で232点。
これでどの組よりも確かに点数は高くなるけど・・・一回でも赤組が二位になってごらん。+15点で235点。」
マキシミン
「あっ!ちくしょう!!茶組負けるじゃねーか!!」
琶月
「えーっと・・・仮に赤組を全部三位にしてフレッシュブラウン組が一位になったとしたら・・?」
ルイ
「その時はフレッシュブラウン組は232点。赤組は220点。そして青組は231点でギリギリフレッシュブラウン組の優勝ね。」
キュピルが両手で頭を抱えぶんぶん横に振る。
キュピル
「あぁ、くそ!ただ勝つんじゃなくて赤組を勝たせないようにしつつ茶組は全部一位取らなきゃいけないのか!」
ルイ
「そういうことよ。」
ヘル
「これは思ったより難しいな・・・。」
キュピル
「いいや、やる!やってやる!!俺が回りに激励を飛ばしまくって絶対に優勝してやる!!」
ルイ
「そう、その意気よキュピル君!」
キュピル
「そして他の組を影から妨害しまくってやる!!」
ルイ
「・・・・はぁ?」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
体育祭委員
「それではーこれより綱引きを始めます!青組、フレッシュブラウン組、位置についてください。」
二つの組が定位置につく。何人かが足で綱をばれないように引っ張り有利を作りだそうとしているが綱は重いので
そんな小細工で動いたりはしない。動いたとしても誤差の範囲だろう。
体育祭委員
「位置について。」
キュピル
「マキシミン、いくぞ。」
マキシミン
「おう。」
体育祭委員
「よーい。」
パン!!
発破音が鳴り響く。
キュピル&マキシミン
「うおぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!!」
ヘル
「どぉぉおらああああぁぁぁぁっっっっ!!!」
琶月
「ぎゃぁぁっ!!何故か綱の上に跨っちゃってる!!!足、足届かな・・ああああああああ(ry」
体育祭委員
「良い勝負です!お互い一歩も引かない激しい攻防が繰り広げられています!」
茶組
「あーだっりー。」
茶組2
「力ゆるめっか・・・。」
茶組3
「もう力でねぇー。」
琶月
「縄、縄がm(ry」
キュピル
「てめえ等に鉄拳制裁だおらああぁぁっっ!!!」
マキシミン
「覚悟しやがれ!!」
体育祭委員
「あーっと!!ここで何故かフレッシュブラウン組同士で喧嘩が始まっています!!これはもう青組の勝利確定!!」
ルイ
「はぁ・・・何やってるのよ・・・もう・・・計画ここでいきなり終わりじゃない・・・。」
ファン
「おや、ルイさん。どうも。」
ルイ
「あ、ファンさん。こんにちは。・・・もうフレッシュブラウン組は終わりですね。」
ファン
「・・・?いえ、ルイさん。良く見てください。」
ルイ
「え?」
体育祭委員
「・・・あれっ!!?綱は全く動いていない!?
今フレッシュブラウン組で綱ちゃんと引っ張ってるのあの巨漢・・じゃなくてヘル一人だけだよね!?
ヘル一人だけで青組全員と渡り会えている!?」
キュピル
「いや、どんだけ馬鹿力だよ。これがリフティング部の力なのか・・。
最初から今に至るまでずっと均衡が続いている・・・ってことはつまり・・・。」
マキシミン
「俺とキュピルとヘル以外全員最初から手抜いてたってことかよ!!」
茶組
「あいつ一人で何とかなるんだったら別にいっしょー。だりー。」
キュピル
「この怒りを糧に綱引くぞ、マキシミン。」
マキシミン
「おう。」
実質三人vs青組との構図になった。二人の力が再び加わった事により徐々に茶組優勢となりつつある。
だがそこから先へ進まない。均衡は保てているが後一人分の力が足りない。
マキシミン
「キュピ・・・ル・・!!このままじゃ負ける・・・!!おい、茶組誰か手伝えよ!!!」
茶組
「DQNが何か言ってるっすwww」
茶組2
「真面目にやってももう負けるんだからええべーーー。」
琶月
「ああ、まだ降りれな・・・ああああああ(ry」
マキシミン
「あいつ等後で殺す。」
キュピル
「くっ・・・こうなったら・・・。奥の・・・手だ・・!!!」
マキシミン
「何!?」
キュピルが大きく息を吸い込み叫び声をあげた。
キュピル
「輝月先輩よりヘル先輩の方が超つええええええええ!!!!」
ヘル
「あたりめえだあああ!!」
輝月
「貴様、我が恩を仇で返したか!!!」
ヘルがキュピルの激励を受け更に力が入る。一方輝月はキュピルへ文句を言うために綱引きから離脱し
キュピルの目の前へと移動する。輝月が戦線から外れた事、ヘルの力が上がった結果一気に茶組優勢となり
数秒後には茶組が勝利を収めた。
キュピル
「いよっしっ!!!!」
輝月
「ぬっ、しまった!」
マキシミン
「はははっ!やったぞ!!」
ヘル
「はぁ・・・はぁ・・・やったな、お前等・・・!」
三人で円陣を組んで万歳する。
体育祭実行委員
「・・・・あ、ありえない・・・・。」
ルイ
「でしょうね・・・。」
・・・・。
・・・・・・・・・・・。
体育祭実行委員
「続いて、青組vs赤組です。」
二つの組が綱引きの定位置につく。
その傍らでキュピルとマキシミンが近くの草影に身を潜めていた。
マキシミン
「キュピル。ここは青組を勝たせる必要があるんだよな?」
キュピル
「そうだ。俺に良い策がある。」
二人が隠れている草影。葉の隙間から見える視界の先には赤組達の背中。
体育祭実行委員
「位置について!よーい!」
パンッ!!
発破音が鳴り響く。二つの組が一斉に綱を引き始めた。
キュピル
「青組が優勢だったらこの策は使わずに済む。」
・・・が、キュピルの意思に反して赤組が優勢となっている。
マキシミン
「おい、このままじゃ赤組が勝っちまうぞ。」
キュピル
「くそ、奥の手発動!!」
キュピルが吹き矢のようなものを口に咥え、狙いを定める。・・・・そして・・。
キュピル
「三連発!ふっ!ふっ!ふっ!」
赤組
「よいしょ!!」
赤組2
「こらしょっ!!」
ルイ
「んっ〜〜〜〜〜!!!」
ブスッ、ブスッ、ブスッ
赤組
「ぎょぉぉっ!!」
赤組2
「ほげぇっ!!」
ルイ
「あぎゃっ!!!!」
突然おしりに何かが突き刺さった。・・・爪楊枝?
綱引きの勝負を忘れ後ろを振り返ると今の叫び声を聞いて笑い転げるキュピルとマキシミンの姿があった。
ルイ+他二人
「・・・・キュ〜〜〜ピ〜〜〜〜ル〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
キュピル
「やべっ、逃げろ!」
マキシミン
「お、おう!」
ルイ
「絶対に半殺しにしてやるっーー!!!」
鬼のような形相でキュピルへ迫るルイとその他二人。
二人の無事は保障出来ないが三人が戦線から離脱したことによって一気に力の均衡が崩れ青組優勢となる。
そのまま青組は引き続け何とか青組の勝利を収めた。
キュピル
「ははっ、やったぞマキシミン!青組が勝った!!」
マキシミン
「これで何とか首の皮繋がったな!」
ルイ
「あら、本当にお二人はそう思っているのかしら?」
キュピル
「うっ・・・・。」
マキシミン
「・・・・ルイ様。こいつだけがやったんです。こいつを引き渡すのでお見逃しを。」
キュピル
「あっ!!てめぇ友を売る気か!!!!」
ルイ
「滅!!!」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
キュピルとマキシミンがルイの攻撃によってダウンしている中、赤組vs茶組による綱引きはヘル一人だけによる勝利を収めた。その時赤組はまだ三人減った状態だったとか。
体育祭委員
「続きまして玉入れです!よーい!」
ぱん!!
キュピル
「ほいほいほいほいほい!」
的確に玉を投げ着実に網の中へ玉を入れて行く。
がっ、真面目に玉を投げているのはキュピル、マキシミン、ヘル、琶月の四人。
一方青組と赤組。いくら玉を網の中へ入れても何故か一向に玉が貯まらない。
ルイ
「え・・・何で・・・?・・・・あっ!!よくみたら網目がフレッシュブラウン組のよりも大きい!!」
しかも特に赤組のだけ網目がガバガバでいくら投げ入れても絶対に入らない。
一方青組は引っかかって一つ程度は入るようになっていた。
キュピル
「(小細工は完璧だぜっ!!)」
ドヤ顔でルイにポーズを決めるキュピル。数秒後物凄い数の石がキュピルに向けて投げられた。
ファン
「試合中止にしましょうよ。」
・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
キュピル
「いよいよ最後だな。」
マキシミン
「あぁ。ここまで作戦通りだ。次にこのバトンリレーで勝てば茶組の優勝だ。」
だがここで二人に難関が遅いかかる。ここはいくら自分達が頑張っても回りの連中にどうしても振り回される。
つまり茶組の中で一人でも歩いてしまえば勝利は絶望的となってしまうのだ。
キュピル
「どんだけやる気ねぇんだよ・・・。」
マキシミン
「おい、どうすんだよ・・。ここは小細工するにしても限界があるぞ・・・。あいつ等のやる気を出させねぇと・・・。」
キュピル
「・・・・はっ・・・。ここで俺に革命的な策が!!!」
マキシミン
「本当か!!」
キュピル
「だがどこまで成功するか・・・。だが試してみないと分らねっ!!」
キュピルがすぐに行動し始めその場から去る。
何としてもここで優勝し馬鹿にした奴等を見返すのだ。
・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そしてバトンリレー開始一分前。
キュピル
「皆!やる気あるかー!?」
茶組
「歩いていっすかー?」
琶月
「私真面目に走っても超おっそーいです!!あとさっきの綱引きでもう股が痛くて痛くて」
マキシミン
「こいつ・・・。」
キュピル
「まぁ、皆疲れているだろうな。ほら、ジュース。飲もうぜ。俺の奢り。」
茶組2
「まじっすか。やりー。」
琶月
「わぁー!人生生きていれば良い事もありますね!!(小さい」
マキシミン
「クックック、俺も頂くz・・・」
マキシミンも缶ジュースを手に取ろうとした時キュピルに遮られた。
キュピル
「マキシミン、お前は飲まない方がいい。」
マキシミン
「はぁっ?・・・・あ!てめ、まさか!?」
・・・・・。
体育祭委員
「位置について!よーい!!」
パン!
赤、青、フレッシュブラウン。三色の組が一斉に走り出した。
体育祭委員
「走ってます!茶組が走っています!!歴史的瞬間です!!!」
キュピル
「まじどんだけだよ。」
ルイ
「え、しかもフレッシュブラウン組早くない・・・!!?」
ファン
「凄いですね、これはレポートにまとめて更に改良を加えてみましょう。」
ルイ
「・・・改良・・?ファンさん・・今何て仰いましたか・・・?」
ファン
「い、いえ。何でもアリマセンヨ・・・ヨホホホ。」
ルイ
「・・・・あーーー!!キュピル!!もしかして!!」
輝月
「っふっふっふ。琶月よ?奇遇にもお主とワシは同じ三週目でバトンを受け取り半周走る。
お主とどれだけの差がつくじゃろうな?」
琶月
「フォッフォォォォッッッッフォォッッッッッフォッふぉオオオオオオオオオオオオオ!!!」
輝月
「何じゃこいつ!!?」
体育祭委員
「あーー!!茶組凄い早いです!!赤、青と圧倒的な差をつけています!!」
キュピル
「今俺は始めて科学研究部に入っていてよかったと心の底から思っている。」
マキシミン
「なんだこれ・・・ハイパープロテイン・・・・?いつ作ったんだよ・・・。」
ヘル
「ウホッ、ウッホォォォッフォッ、ウフォフォフォッ!!!」
キュピル
「やばい、ヘル先輩が二缶飲んで手つけられないことに。」
その後、琶月、ヘル、マキシミンへとバトンは渡りそして最後に走者キュピルへとバトンが回った。
ルイ
「ちょ、ちょっとキュピル!茶組の人に何したの!?」
キュピル
「元気の出る栄養ドリンクさ!」
マキシミンからキュピルへとバトンが渡りキュピルがゴール目掛けて一直線で走って行く。
既に赤、青とは二週以上の差が開いており茶組の勝利は確実だった。
特にトラブルも発生する事なくキュピルが一位でゴールし茶組三連勝を収めた。
マキシミン
「やったなキュピル!!これで茶組優勝間違いn・・・って、うわああああああ!!!キュピル!!あれ見ろ!!」
キュピル
「何だ?・・・・あああああああああぁぁぁっぁぁぁ!!」
赤組が青組と大きな差をつけてコースを走っている。このままでは赤組が二位となり茶組優勝の夢は途絶えてしまう!
マキシミン
「キュピル!妨害だ!妨害しに行くぞ!!」
キュピル
「おう!」
テルミット
「お二人とも!!先程の綱引き、玉入れで不正をやらかしたと話しが出ていますよ!」
キュピル
「げっ!テルミット先生!!」
テルミット
「本当かどうか聞くためにもこっちへ来てもらいますよ。」
キュピル
「やめ、先生!!今俺はここを離れる訳には・・!!」
マキシミン
「は、離せぇぇ!!」
何故か馬鹿力を発揮しているテルミットに二人は引っ張られ続け本部へと連れて行かれようとしている。
このままでは・・・赤組が・・・赤組が優勝してしまう・・・!!!
バトンは既に最終走者へと手渡されており赤組はあと10秒程でゴールする。
キュピル
「赤組の・・・最終走者は・・・!!・・・・ルイ!?」
ルイがゴール目掛けて一直線に走っている。
だめだ、もうこれしか手は・・・ねぇ!!
キュピルが大きく息を吸い込み、そしてルイにも聞こえる程の大きな叫び声をあげた。
キュピル
「ルイィィィィィィッッッッーーーーー!!」
思わずルイが驚き後ろを振り向いた。だが、だめだ。それでも青組は追いつかない!更に引き留める言葉を言わないと!
だが何だ?これ以上ルイを妨害する方法はあるのか!?
何でもいい・・・何か・・・・何か来い・・・・!!!
そして思いついたこの一言・・・。
キュピル
「愛してるぞおおおおおぉぉぉぉぉぉおぉーーーーーーーー!!!」
ルイ
「えっ!!・・・・わっ!!」
ルイが驚き足を止め、そしてバトンを落とす。が、バトンを落としたことでハッとしバトンを拾って急いでゴールへと向かう。
だがあと一秒という所で青組に追い抜かされてしまい青組が二位、赤組は三位でバトンリレーは終了した。
ルイ
「あ、しまった・・・・。」
・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
体育祭委員
「これより表彰式を行います。」
キュピル
「やったな・・・マキシミン・・・」
マキシミン
「あぁ・・・・。」
目と鼻と耳以外全身に矢が突き刺さっている二人。
剥がす時引っ張られて痛いので後が大変だ。だがそんな事よりも二人は今勝利と達成感に包まれていてそのような事は全く眼中にない。
体育祭委員
「一位の色を発表します。」
キュピル
「いこう、マキシミン」
マキシミン
「あぁ。」
二人が優勝トロフィーを受け取りに行くため一歩前に出る。
体育祭委員
「一位、青組!231点!!」
キュピル&マキシミン
「はぁ?」
輝月が壇上に上がりトロフィーを受け取っている。
輝月
「ふっ、ヘルよ。お主は本当に無能の組におるのぉ?」
ヘル
「てめぇ殺す!!」
二人が何処からともなく竹刀を取り出し試合を勝手に始める。
キュピル
「ちょ、ちょっとまてよ!!?何の陰謀だよこれ!!!」
マキシミン
「テルミット先公の追撃は交わして点数減点はなしにしてもらったんだぞ!!!なのになんだよこれはああ!!」
二人がギャーギャー騒いでいるが無視して式は進められている。
体育祭委員
「二位、赤組!220点。」
ルイが壇上に上がり賞状を受け取っている。
体育祭委員
「そして三位、フレッシュブラウン組。・・・23点?随分低いですね。」
二人が慌てて点数表に目をやった。
・・・地面に 2 という紙が落ちていた。
キュピル
「虐めじゃねーか!!!!」
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
その日の帰り道。
まだ涙の止まらないキュピルとその横で説教を続けるルイ。
ルイ
「これは天罰よ、キュピル。正々堂々と勝負をしなかったから神様がキュピル君に罰を下したの。」
キュピル
「うぅぅ・・・ぢ・・ぢぐじょう・・・ぐぞぉぉ・・・。なんでだよぉ・・・。俺は最初からやる気・・あっだぞぉ・・・。
回りのやづらが・・・やるぎねぇ・・ぜいで・・・ぐぞぉぉ・・・。」
ルイ
「・・ちょっと・・・そんなに本気で泣かなくても・・・。
・・・ううん・・・。・・・ね、キュピル君。」
キュピルが無言で頷く。聞いているって意味だ。
ルイ
「・・・ほら、私のハンカチ。」
キュピル
「・・・ありが・・どう・・・。鼻をかむ・・・・・・チーーーーン!!」
ルイ
「あっ!!!」
キュピル
「返す・・・。」
ルイ
「滅!!!!!」
こうして、大きなイベント体育祭を終えたキュピル達。
どんな一日であれこれも学園生活の一つ。
キュピルの高校生活はまだまだ続いていく。
・・・・・。
ルイ
「・・・・ねぇ、キュピル君?」
一人での帰り道。隣には当然キュピル何か居ないが構わずつぶやき続ける。
ルイ
「私だって今日体育祭負けちゃったんだよ?勝つ目は残ってたのに・・・頑張ったけど全部キュピル君に妨害されたんだよ?」
ルイが怒った表情をしながら鞄を振り回す。
ルイ
「・・・だけど私は今日良い一日だと思ってるんだ。最後キュピル君が私を妨害しようと発したあの叫び。
私の名前を呼んだまではよかったけどその続きが浮かんでこなかった。そして出てきた言葉が「愛してる」だって。
アハハハ、何で思いついた言葉がそれなのよ。どうしてそれが一番に思い浮かんだのよ。
・・・うん。」
ルイが自分の家へ辿りつく。もう星空が見え始めていた。
ルイ
「普段やる気なかったりする事のが多いのにこう言う行事には本気になっちゃう。
キュピル君の事、良くわかんないなぁ〜。」
・・・・。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
続く